記事一覧

再生計画認可決定確定までに至る流れとは

(1)認可決定
不同意意見書(小規模個人再生の場合)または意見書(給与所得者等再生の場合)の提出期限終了後、東京地裁では個人再生委員が債権者からの意見書を集約した上で、改めて認可の可否を判断し、可と認めれば、A4判一枚のチェック方式の簡単な認可相当意見書を提出し、裁判所はそれを参考に認可決定を出す。個人再生委員をおかない運用をしている裁判所では自ら判断の上、認可決定をする。

(2)認可決定確定と履行
再生計画認可決定は官報公告されるので、現状では決定が確定するのは、認可決定から約一ヵ月後である。確定後は、再生計画に従って弁済をすれば完済となる。東京地裁では、認可決定がおりると、個人再生委員は、その時点までに再生債務者から送金されてきた弁済予定原資を清算する(個人再生委員報酬を引いた残りを返金する)。債務者代理人は、各債権者に認可決定があったことを知らせるとともに、今後の支払先振込口座を書面にて知らせてもらう。履行について、債務者が直接送金するか、債務者代理人が代理弁済をするかは、分割弁済の任意整理の場合と同じく、代理人によってやり方が分かれる。再生債権によっては、再生計画による弁済額が非常に少ない場合がある。この場合、全体の履行の便宜上、原資が許せば、少額債権だけ、繰上返済をすることは自由である。再生計画の中で、少額債権だけを早期弁済する旨の定めをすることも可能であるが(民再二二九条一項)、わざわざ文章化する手数と繰上弁済という履行段階での工夫とを比較して、安全便利な方を選択すればよいであろう。

(3)非減免債権
再生計画認可決定確定により、再生債権は、再生計画の定めるところ(債務の減免と分割払い)により、権利が変更される。しかし、民事再生法二二九条三項に定める、①再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、②再生債務者が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権、および③扶養関係等の義務に基づく請求権は、再生債権者の同意がなければ、債務を減免することはできない。このためこれらの債権は非減免債権と呼ばれる。非減免債権は破産法二五三条一項二号から四号の非免責債権と同一であり、いずれも政策的見地から設けられたものである。非減免債権の弁済方法は、基準債権となった非減免債権については、再生計画で定められた三年間(例外五年間まで)の計画弁済期間中は他の基準債権と同様の基準で分割弁済し、計画弁済期間満了時に残額を一括弁済しなければならない。

再生計画案の作成・提出

財産目録・報告書が提出され、基準債権の額も判明したら、再生計画案を作成して提出する。東京地裁では、裁判所と個人再生委員に提出し、個人再生委員が内容をチェックし、問題があれば、修正等を促す。再生計画案は、具体的には再生債権の弁済率(裏からいえば減免率)を定めた権利変更条項が記されている。個人再生では、権利変更条項の内容は、「弁済期を三月に一回以上とする、三年間(特別事情があれば五年間まで延長可能)の分割弁済案」でなければならない(民再二二九条二項)。弁済率(減免率)は、前述のとおり最低弁済額の要件を満たすものでなければならない。分割弁済期間は原則三年間だが、特別事情があれば五年間まで延長が許される。

東京地裁では「特別事情」の解釈は柔軟になされているが、この点も裁判所の運用による違いがあり得るだろう。再生計画案だけでは、各債権者は自己の債権への弁済がどうなるのかすぐにはわからないので、各債権者ごとの弁済総額と毎回の弁済額を明記した弁済計画表を、再生計画案に添付させる扱いをしている裁判所が多いと思われる。再生計画案が提出されると、東京地裁では、個人再生委員は、提出された再生計画案について問題がないと判断したら、手続きを進めるのが相当である旨の意見書(A4判一枚のチェツク式の簡単なもの)を裁判所に提出し、裁判所はそれを参考に付書面決議決定(小規模個人再生の場合)または付意見聴取決定(給与所得者等再生の場合)をする。

個人再生委員をおかない運用をしている裁判所は自ら判断の上、これらの決定をする。決定後、裁判所から各債権者に弁済計画表付の再生計画案が送付される。送付を受けた債権者は、小規模個人再生の場合は、再生計画案に不同意のときは不同意意見書を、給与所得者等再生の場合は、再生計画案に意見(単に「不満だ。」というものは無意味であり、認可要件の存否に関係する内容でなければ意味がないが)があるときは意見書を、裁判所の定める期限(東京地裁の標準スケジュールでは、付書面決議決定または付意見聴取決定から二週間後)までに、裁判所に提出する。

再生計画による返済額

【給与所得者等再生における最低弁済額】
給与所得者等再生では、①清算価値と、②民事再生法二三一条二項三号四号の額と、③可処分所得額のうち、いずれか高い額が最低弁済額となる。①清算価値と、②同法二三一条二項三号四号の額の意味は、小規模個人再生の場合とまったく同じであるので、ここでは③可処分所得額について説明する。可処分所得額とは、同法二四一条二項七号に規定されているもので、考え方としては、所得税、住民税および社会保険料を控除した一年分の収入の中から、生活保護に準拠した最低生活費を控除した残りを一年分の可処分所得とみなし、その二年分相当額全部を、原則三年間(例外最長五年間)の収入の中から債務の弁済に回すべきだ、というものである。

可処分所得額の具体的算出方法は可処分所得額算出シート(裁判所の多くはこの様式を使っている)を使えば、機械的に算出される。以上の結果、例えば、清算価値七〇万円、基準債権の総額七〇〇万円の債務者の可処分所得額が一二〇万円の場合は、最低弁済額は、基準債権の総額の二割の一四〇万円となる。この債務者の可処分所得額が二〇〇万円だったとすると、最低弁済額は可処分所得額の二〇〇万円となる。最低弁済額についての可処分所得額の縛りは、給与所得者等再生を利用する場合だけに適用される。

給与所得者は、一般に給与所得者等再生と小規模個人再生の両方を利用し得る(もちろん、収入の変動幅が大きい人の場合は給与所得者等再生は利用できないが)。両方利用可能の人が、小規模個人再生を利用した場合は、最低弁済額についての可処分所得の縛りは働かない。例えば清算価値七〇万円、基準債権の総額七〇〇万円の給与所得者(給与所得者等再生利用可能とする)の可処分所得額が二〇〇万円であった場合、この人が給与所得者等再生を利用すると、最低弁済額は可処分所得の二〇〇万円となるが、小規模個人再生を利用すれば、民事再生法二三一条二項三号四号の額の一四〇万円(基準債権の総額七〇〇万円の二割)となる。

再生計画案の作成・提出・認可決定

個人再生の目的は、債務者が円滑に支払える程度まで、債務を減免することにある。一般的には、減免率が大きければ大きいほど、債務者の支払可能性が高まるが、債権者がそれだけ損することになる。小規模個人再生と給与所得者等再生においては、法律によって最低弁済額が決められており、再生計画による返済額は最低弁済額以上でなければならない。再生計画による弁済額は、最低弁済額以上であればいくらでもよいが、実務では、債務者の生活再建の観点から履行可能性を重視して、最低弁済額をそのまま再生計画案の弁済額とすることがほとんどである。小規模個人再生の場合は、再生計画の弁済率の妥当性について債権者の不同意という形で、チェックが入るから、収入が高額であるのにあまりに弁済額が低いというような場合(現実には、収入が高額な人は、それに応じて負債も多額となるのが通例なので、このような不均衡はめったにないが)は、不同意が多数となることも考えられるので、この点注意する必要がある。

【小規模個人再生における最低弁済額】
小規模個人再生では、①清算価値と、②民事再生法二三一条二項三号四号の額のうち、いずれか高い額が最低弁済額となる。①の清算価値とは、債務者が仮に破産となった場合に再生債権者に分配されるであろう配当総額のことである。再生債権者にとって、再生計画による弁済総額が、破産となった場合を下回るのでは、再生手続きに協力する理由はないからである。②の民事再生法二三一条二項三号四号の額は、基準債権(正確な定義は同項三号カッコ書。簡単にいえば、個人再生手続上、金額がはっきり決まった再生債権)の総額に応じて規定されている。

基準債権の総額が一〇〇万円未満の場合は全額、一〇〇万円以上五〇〇万円以下の場合は一〇〇万円、五〇〇万円超一五〇〇万円以下の場合は基準債権の総額の二割、一五〇〇万円超三千万円以下の場合は三〇〇万円、三千万円超五千万円以下は基準債権の一割である。例えば、清算価値が七〇万円(破産になったら七〇万円が配当総額となる)、基準債権の総額(負債額とみてよい)が七〇〇万円の債務者の場合は、最低弁済額は基準債権の総額の二割の一四〇万円となる。清算価値が三〇〇万円、基準債権の総額が七〇〇万円の場合は、最低弁済額は清算価値の三〇〇万円となる。なお、論者により民事再生法二三一条二項三号四号の額自体を、「最低弁済額」ということがあるので、最低弁済額といった場合、どのような意味で使用されているのかに注意する必要がある。

ページ移動