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小規模個人再生と給与所得者等再生のメリット・デメリット

個人再生には、再生計画において債務者が支払うべき最低弁済額が定められている。可処分所得額とは、給与所得者等再生に限定して民事再生法二四一条二項七号で定められている最低弁済額要件の一つであり、詳しくはあとで述べるが、債務者の収入や扶養家族の状況等によって金額が変化する。可処分所得額要件があることによって、それがない場合に比べて最低弁済額が引き上げられてしまう事態が、常にではないが、しばしば発生する。事案にもよるが、概していえば、可処分所得額要件があるために、給与所得者等再生を利用すると、小規模個人再生を利用するよりも、多額の弁済をしなければならないことになりがちである。

給与所得者等再生の場合、前に給与所得者等再生を利用して完済したり、破産免責を受けていたりすると、その後当該再生計画認可決定や免責許可決定の各確定から七年間は給与所得者等再生を利用できない(民再二三九条五項二号)。給与所得者等再生を利用して完済した人が、その後破産して免責許可の申立てをした場合、免責許可の申立てが再生計画認可決定確定から七年以内のときは、免責不許可事由となる(破二五二条一項一〇号)。小規模個人再生の場合には、こうした免責不許可事由はない。したがって、将来、自己破産免責を利用する事態が発生するかもしれない債務者については、うかつに給与所得者等再生を利用すべきではなく、小規模個人再生を利用した方が安全である。

小規模個人再生と給与所得者等再生にはメリット・デメリットがある。現状は、小規模個人再生の再生計画案の弁済率のほとんどは最低弁済額程度であるけれども、一部政府系金融機関を除き、債権者の圧倒的多数は不同意を述べていないので、給与所得者等再生のメリットはほとんどない。給与所得者等再生のデメリットである方が大きい。特に、可処分所得額が最低弁済額を引き上げるような場合(しばしば発生する)は、法定多数が不同意を述べる高い可能性があるときを除き、給与所得者等再生ではなく、小規模個人再生を考慮すべきである。

実際、現在の全国の個人再生申立件数は、給与所得者等再生より小規模個人再生の方がはるかに多い。小規模個人再生と給与所得者等再生の二つの手続きが利用可能な債務者の場合は、まず可処分所得額を試算し、その上でどちらの手続きにすべきかを決めるのが安全であるが、資料不足等により、可処分所得額の計算が容易でないときもある。その場合、小規模個人再生を選択するというのも一つの考えである。万一、小規模個人再生が、債権者の不同意多数で失敗に終わったら、次に給与所得者等再生を申し立てればよいのである(もっとも、住宅特則付個人再生の巻き戻し事案の場合は、民事再生法一九八条二項の期間制限があるため、この策は使えないことに注意)。

途中完済・一連充当計算(民法の充当規定の射程)

一方当事者が債務を負っている場合に他方当事者が債権を取得すれば、当事者に充当指定がない限り民法の法定の充当の規定によって債務が消滅する。この民法の充当規定を制限超過貸付けに当てはめれば、無効な制限超過利息は借主の不当利得返還請求権(債権)となることから、借入金債務が存在する場合、制限超過利息部分は順次借入金債務の元本に充当されることとなる。そして元本完済後の支払は不当利得となり、借主は貸主に対して返還請求することができる。

では、元本完済後の借入金債務に既発生の過払金を充当することができるか。もとより、当事者の合意によって将来発生する債務に現在の債権を充当することは可能である。しかし、民法の充当規定はあくまで債権が発生した時に充当先となる債務のあることを前提としている。過払金債権が発生した時には、すでに充当先となる借入金債務は消滅し、存在しておらず民法の法定充当の想定する場面と異なることから問題となる。存在しない債務、将来発生する債務に現在の過払金債権を充当するうえでは民法の法定充当の規定では足りず、何らかの手がかり(法的根拠)が必要となる。

この点、利息制限法の強行法規性、違法状態是正機能をもって将来の借入金債務に過払金を充当する根拠とする考えがある。しかし利息制限法は、金利規制を定めた法律である。利息制限法一条二項が存在しながらも、無効な制限超過部分を存在する元本債務に充当し元本完済後の支払を不当利得として請求する権利までは、最高裁によって肯定されたものの、将来の借入金債務に充当することまで射程範囲を広げることは困難ではないか。過払金を新たな借入金債務に充当することを認めるためには何らかの当事者の意思を介在させるしかないように思われる。

破産手続開始決定とその後の手続

申立てを受けた裁判所は、提出された書類と債務者本人や代理人との面接(「審尋」という。破一三条、民訴八七条二項)により、債務者に破産原因があるかどうかを調査し、破産原因があると認めれば、破産手続開始決定をする(破三〇条一項)。最近では審尋を経ずに書面審査だけで破産手続開始決定を出す裁判所も増えている。破産手続開始申立てから破産手続開始決定までの時期は各裁判所により区々であるが、二〇〇五(平成一七)年に実施された日弁連の破産記録調査では、申立てから三〇日以内が約六〇%、四五日以内が約八〇%となっている。

東京地裁破産再生部では、同時廃止事件では、代理人が面接したその日に破産手続開始決定がなされる扱いとなっている。冒頭で述べたとおり、破産手続開始決定の際、債務者にめぼしい資産がない場合、破産手続開始決定とともに同時廃止決定がなされる(破二一六条一項)。破産手続開始原因はあるが、債務者の財産が少なくて破産手続の費用すら捻出できないことがわかった場合には、破産手続を進めても意味がないばかりか無駄であるから、一応破産手続開始決定の効力は発生させた上で、その後の手続(破産管財人の選任や債権届出期間や財産状況報告集会、債権調査期間・期日の指定など)を進めない扱いとする裁判所の決定である。

破産廃止決定の主文と理由の要旨は破産手続開始の決定の主文とともに公告され(破二一六条三項)、利害関係人は即時抗告ができる(同条四項、破九条)。廃止決定がなされれば、管財事件の場合とは異なり破産者は破産財団についての管理処分権を失わないが、資格制限などの効果は残る(免責決定が確定するなどして復権して初めて資格を回復することになる(破二五五条一項一号))。また、破産債権者の個別的権利行使の禁止(破一〇〇条一項))という制約も一応ははずれることとなるが、免責手続中の強制執行を許すことは破産者の経済的再生の大きな障害となる。

同時廃止決定が確定したときには、免責許可の申立てについての裁判が確定するまでの間は破産者の財産に対する破産債権に基づく強制執行等、破産債権に基づく財産開示手続の申立てまたは破産者の財産に対する破産債権に基づく国税滞納処分はすることができず、破産債権に基づく強制執行等の手続で破産者の財産に対してすでになされている者および破産者についてすでになされている破産債権に基づく財産開示手続は中止する(破二四九条一項)。ただし、以上の禁止の対象が「破産債権に基づく」となっているように、財団債権は免責の対象とならないので禁止の対象外となっている。

破産手続開始申立ての方式とは

破産手続開始の申立ては、破産規則で定める事項を記載した書面でしなければならない(破二〇条一項、破規一三条)。東京地裁破産再生部の申立書書式は、A四横書き一枚のシンプルなものである。破産手続開始申立ての際には、申立手数料(印紙)と予納郵便切手および予納金(破二二条一項、破規一八条一項)を納付する必要がある。予納金は、官報公告費用に充てられるほか、管財事件の場合には、管財業務の遂行に必要な費用や管財人報酬などの手続費用に充てられる。費用の予納がない場合、費用の仮支弁の適用を受けるケースを除き、裁判所は予納命令を発し(破三一条二項)、それでも費用の予納がないときには、破産手続開始申立てを却下することになる(破三○条一項一号)。

債務者が、弁護士に破産・免責手続を依頼する場合、以上とは別個に弁護士費用がかかる。東京三弁護士会の費用基準は、法律扶助の基準を満たす債務者の場合には、法テラスによる弁護士費用の立替制度を利用することができる。破産手続開始の申立ては、破産手続開始の決定があるまでは取り下げることができるが、開始決定後は取り下げることはできない(破二九条)。破産手続開始決定がなされると、その決定の時から効力を生じるから、決定後の取下げを認めると法律関係が複雑化し、不合理な結果や混乱を招くと考えられるため、そのような事態の発生を防止する趣旨である。

同様の趣旨から、破産手続開始決定以前でもすでに他の手続の中止命令(破二四条一項)、包括的禁止命令(破二五条)、財産保全処分(破二八条一項)、保全管理命令(破九一条二項)、否認権のための保全処分(破一七一条一項)がされているときは、裁判所の許可を得ないと取下げはできないとされている。取下げは書面で行わなければならない(破一三条、民訴二六一条三項)。ただし、自己破産申立ての場合はもちろん、債権者申立ての場合でも相手方である債務者の同意は不要である。

どの裁判所に申し立てればよいか(管轄の問題)

債権者申立ての場合、申立債権者は、破産原因の疎明に加えて、自己の債権の存在の疎明をし、さらに予納金を納める必要がある。債権者申立ての破産は、悪徳商法を行った会社などに対して被害者が債権者となって申し立て、債務者からの資産流出を防ぐとともに、管財人に隠し財産の調査や流出資産の取り戻し等をしてもらうという形で利用されることが少なくない(最近では近未来通信とその幹部に対する破産手続開始申立事件、株式会社L&Gとその代表者に対する破産手続開始申立事件などがある)。

この場合、破産原因の疎明のために債務者の資産状況の概略をいろいろな方法を駆使して把握する必要がある(インターネットや新聞、債務者が作成したパンフレット類や書籍等などによる情報収集がオーソドックスなやり方であろう)。債権者本人の債権の存在の疎明も、特に詐欺で編されたというような不法行為債権の場合は容易でないが、先行して訴訟を提起して判決を取得したり、多数の被害者の陳述書を準備したりして被害状況を疎明しているケースもある(法の華三法行に対する破産手続開始中立事件など)。
 
債務者が営業者でない個人・法人の場合は、普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所である(破五条一項)。普通裁判籍とは、民事訴訟法四条二項により原則として住所地、住所がないときまたは知れないときは居所、日本国内に居所がないときまたは居所が知れないときは最後の住所地となる。債務者が営業者である個人・法人の場合は、主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所である。営業所を有しないときは右の普通裁判籍を管轄する地方裁判所となる(破五条一項)。

新破産法では、破産手続の迅速化・合理化の観点から、前述のとおり、親子会社、法人の代表者と法人、連帯債務者相互間、主たる債務者と保証人、夫婦などでいずれか一方の破産事件が係属している裁判所にもう一方の者が破産を申し立てることができるようになった。大規模破産事件についての特則も設けられた(破五条三項~一〇項)。また、著しい損害または遅滞を避けるため必要があると認めるときに裁判所が職権で移送できるという制度も導入された(破七条)。

破産能力(破産できる個人・法人の範囲)

破産能力とは、破産手続開始決定を受けることのできる資格をいうが、破産能力に関する明文の規定はない。破産手続等に関しては、特別の定めがある場合を除き、民事訴訟法の規定を準用するとされているから(破一三条)、民事訴訟法上、当事者能力を有する者が破産能力を有することになる(民訴二八条、二九条)。民事訴訟法二八条は、「当事者能力は民法その他の法令に従う」としており、民法は、個人(民三条一項)と法人(民三四条)に権利能力を認めているから、結局、破産能力を有するのは、個人および法人と民事訴訟法二九条にいう「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるもの」ということになる。

外国人および外国法人については、平成一二年改正前の旧破産法二条が、「外国人又は外国法人は破産に関し日本人又は日本法人と同一の地位を有す。但し、その本国法により日本人又は日本法人が同一の地位を有するときに限る」と規定していたため、破産能力を制限する場合があるかどうかが議論されたが、平成一二年に改正されて右記二条但書が削除され、前述のとおり、新法では三条において、免責能力を含む破産能力について日本人または日本法人と同一の地位を有することが明示され、疑問は解消された。

破産能力の原則は、右に述べたとおりであるが、破産清算の結果、法人格が消滅することを法秩序上是認できない国家や地方自治体(「本源的統治団体」と呼ばれている)には例外的に破産能力はないと解されている。また、健康保険組合のように、債務超過に陥り解散した場合には健康保険法二六条四項によって権利義務が包括的に政府に承継されるというような規定が置かれている法人については、清算を図る必要がないから、このような法人についても破産能力が否定されると解されている。

債権者または債務者(破一八条一項)および法人における理事や取締役などの債務者に準じる者(破一九条一項)は、破産手続開始の申立てをすることができる。債務者が法人の場合には、「自己破産」とされるためには、法律に定める正規の手続きを経て意思決定を行った上で(取締役会を設置した株式会社における取締役会の決議など)、代表権限を有すると認められる者(株式会社における代表取締役など)が破産手続開始の申立てをする必要があるので、取締役会議事録または取締役の同意書が求められる。しかし、取締役など債務者に準じる者による準自己破産申立ても認められているので(その場合には、前記議事録や同意書は不要)、「自己」破産申立てにこだわる必要はない。

破産手続選択の基準

破産手続きを選択する基準は、債務者の総債務額と毎月の返済可能額を聴取し、この「三六回返済基準」は、債務者に三年間で総債務を返済できる返済能力があるかという考え方である。「総債務額」は、請求されている金額(将来利息は考えない)の合計であり、「返済可能額」は、債務者が「生活費をぎりぎりまで切り詰めて残ったお金」ではなく、「手取り収入から通常必要な住居費、食費、光熱費、教育費、交通費、日用品購入費、交際費、小遣い等の費用を除きかつ二二万円を緊急のための資金として差し引いた上で残ったお金」である。

「三六回返済基準」の根拠は、貸金業者等の債権者は、通常、三年以内の返済案を要求してくること(つまり、貸金業者等の債権者は、三年を超えるような返済案には原則として応じてこないから、全部の債権者との間で長期分割払いの和解をすることは事実上困難であること)、および債務者の返済能力は、三年を超えるといろいろな事情のために変更する可能性が大きくなること(例えば、年数が経過すれば、結婚したり、離婚したり、子供ができたり、給料が減額されたり、勤務していた会社が倒産したりなどという出来事が起こる可能性が大きくなる)にある。「三六回返済基準」を用いると、予想以上に破産をアドバイスすべき債務者が多いことに驚くかもしれない。

しかし、現在用意されている多重債務者の救済手段としては、破産手続を選択しづらい事由(住宅を所有している場合にどうしてもそれを維持したいとか、極めて稀ではあるが重大な免責不許可事由がありかつ本人の資質などから裁量による免責すら得られない可能性が高い等)がないのであれば破産手続が最適であると考えてよい。破産制度については、いまだに選挙権がなくなるとか、子供の就職に影響するとか、の誤った情報が流通しているが、債務者の破産制度に対する偏見を取り除いてやりながら、自信をもって破産手続の選択をアドバイスすべきである。

三六回返済基準で破産相当と判断される場合でも、貸金業者等からの借入期間が長い場合には、利息制限法で計算し直すと、真実の債務額が「請求されている金額孝壽喰西大幅に減少するばかりか、過払いになる場合も少なくない。その場合には、「三六回返済基準」で簡易に出した方針を再検証する必要がある。場合によっては破産せずに、回収した過払金をもとに任意整理で解決することもあり得るからである。この点の検討を怠ったときには、弁護過誤にもなり得るので、十分な注意が必要である。

免責申立ての失念を防ぐための具体論

(1)外国人が免責を受けることができることの明示(破三条)
これまでは解釈によって外国人も免責を受けることができることとされていたものを、三条において「外国人は、破産手続、「免責手続及び」復権の手続に関し、日本人又は日本法人と同一の地位を有する」として明示した。

(2)管轄の拡充(破四条~七条)
法人の代表者と法人、連帯債務者相互間、主たる債務者と保証人、夫婦などでいずれか一方の破産事件が係属している裁判所にもう一方の者が破産を申し立てることができるようになった。

(3)自由財産(破産財団に属しない財産)の範囲の拡大と自由財産の範囲の拡張の裁判(破三四条三項・四項)
差押禁止財産は旧法でも基本的に自由財産であったのだが、なぜか自由財産からはずされていた農業・漁業用の動産が自由財産とされ、標準世帯の必要生計曹](民事執行法施行令により三三万円とされている)の三ヵ月分(民事執行法の差押禁止金銭の二分の三倍)の九九万円が自由財産とされた。旧法では金銭の自由財産は必要生計費の一ヵ月分でかつその必要生計費も二一万円とされていたので、大幅にアップした。また、裁判所が、破産者の生活の状況や保持している自由財産の種類・額、破産者が収入を得る見込みなどの事情を考慮して、自由財産の範囲を拡張することができるという自由財産拡張の裁判の制度が導入された。いずれも債務者の経済的再生の目的に沿うものである。

(4)免責制度の強化(破二四八条~二五四条)
免責申立ての失念を防ぐための免責申立ての擬制(破二四八条四項)や免責手続中の個別執行禁止効(破二四九条)の規定が新設された。一方で、非免責債権として、故意または重過失に基づく身体・生命を侵害する不法行為請求権や養育費・婚姻費用等の請求権、雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権が追加された(破二五三条一項三号~五号)。そのほか、債権調査・確定手続、配当手続の簡素化・合理化および破産財団の管理、換価の迅速化・実効性確保の見地からの管財人の権限強化など(簡易迅速な債務名義の取得(破一五六条)、損害賠償請求権の査定制度(破一七七条~、担保権消滅制度(破一八六条~など)の改正・制度の新設があった。

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